自販機のいろ

我が家のある町内には自動販売機って1カ所しかありませんでした。ある植木屋さんのお宅の駐車場内に自宅用っぽく置かれています。ところが昨年、路地に面したお屋敷の裏門に目にも鮮やかなブルーのコーポレートカラーをまとった自販機が出現しました。そのお屋敷は草木豊かなこの町内でも屈指の美しい庭と生け垣を持つお宅で、よもやそこにこんな破廉恥な物体が置かれるとは(じつは御当主が他界され、ご遺族は転居されて空き家になってしまったのです)。ご近所の奥さんも「目が痛い」というほど周囲と不釣り合いな色彩です。まちなかでは見慣れてる色だけれど、この環境で見ると激しく違和感を感じます。このあたりは県によって風致地区に指定されています。風致地区とは緑と調和するべき地区という意味だそうで、建物は色彩が規制されています。でも自販機は規制対象外なのです。
じつは鎌倉の鶴岡八幡宮と大仏の近辺にある自販機は景観カラーが義務づけられています。どの飲料メーカーの自販機でも薄いベージュに塗装されています。この自販機も景観カラーに塗り替えて欲しい。そこで、この自販機の管理会社に電話してそう言ったら「規制区域外は難しい」とにべもない。あきらめるしかないのか。
ところがそれから約半年後の先月になって、県が管轄していた風致条例の運用が鎌倉市に移管されることになり、新たに内容を見直すことになったという話をききました。そして今、市の案に対して市民の意見を募っているそうです。おお、だったら自販機のいろを規制してくれ。風致地区内では自販機は景観カラーにしてくれ。さっそく市民の意見として(パブリックコメントというそうです)市のHPを通じて担当部署にメールしました。受け入れてくれるでしょうか。

 

コミュニティハウジング

シニア向けのコミュニティハウジングを計画しています。コミュニティハウジングとは、分譲マンションにコモンスペースが付属している形式で、普通の住戸以外に住民みんなで使う大きなキッチンやダイニングルーム、リビングルームなどが用意されています。最近我が国でも見られるようになってきたコレクティブハウジングというものがありますが、それは賃貸のマンションにコモンスペースがついているもの。一方、住民が組合を作って設計委託するコーポラティブハウスがあり、こちらは所有権方式ですが、いっしょに食事などをすることは前提になっていないのでコモンスペースは限定的です。
コミュニティハウジングはコレクティブとコーポラティブのいいところを組み合わせたシステムで、所有権方式ながら住民同士がコミュニケーションをとりながら暮らしていく新しいタイプのコーポラティブハウスです。特に今回計画しているのはシニア女性向けのもので、年配の女性があつまって楽しく安心して暮らせるようにバリアフリー仕様で設計中です。
この建物が面する道はかつての商店街で、2階建ての木造店舗がだんだんと3階建てに建て変わっていっています。この建物は4階建てなのですが、その将来のまち並みに合わせて、道に面した正面は3階建てにします。同じ高さの壁面が並ぶまち並みにするためです。しかもその外壁を木板張りにすることで、鎌倉らしい印象をまち並みに与えたいと思っています。
山門のような構えを見せる木板張りの壁をくぐると広々としたポーチがあり、来訪者を迎えています。このポーチは地域に開放されたポケットパークとしても使ってもらいたいと思います。ポーチからドアを入ると玄関ホールに続いてコモンスペースが広がっています。住民同士が食事したりおしゃべりしたりする集いの場です。近所の人たちが訪ねてきて一緒に過ごすこともできます。2階から4階のそれぞれの住戸に上がるためのエレベーターはコモンスペースの奥に位置しています。ですから、住民は帰ってくると必ずコモンスペースを通るので、そこにいる同居者とあいさつを交わすことになります。隣人の顔も知らないという都会のマンションとはちがう、暖かな人間関係がコミュニティハウジングにはあります。

年度末に思う

新しい手帳を注文しました。正月からではなく、4月から始まる形式の手帳です。大学のスケジュールに合わせているのですが、そもそも日本の学校や役所など公共的な制度はなぜ4月から新年度なんでしょうか。明治時代にそれを決めた人はちゃんとお正月という区切りがあるのに、それとは別に年度制をつくっても面倒になると思わなかったのでしょうか。同じように、暦も和暦と西暦の2種類を併用しています。あれは平成で言うと何年?みたいに面倒な思いをする場合があります。ちなみに今年は「昭和88年」だそうです。
日本の家では裸足ですが、会社や学校では靴を履いています。また、同じ家の中に畳とフローリングがあります。食事の時、ナイフ&フォークと箸を使い分けています。文章は縦書きと横書きがあり、結婚式は神前で葬式は仏前だったり。
日本の生活にはこういうダブルスタンダードがいくつもあって、面倒と思うよりどっちも使えてラッキー、みたいな感じです。なかでも一番便利なのはうらおもて、というやつですかね。