家づくり日記その1「土地はどうやって探すか」

台風がひとつ通過してもまだまだ残暑がきびしい今朝、事務所に新たな建て主さんが打ち合せにきてくれました。湘南は藤沢のアパートで暮らす40代の堤さん(仮名)ご夫婦と、小学生の2人の息子さんたち。サッカーで日焼けした元気いっぱいの兄弟です。ケーブルTV関係の会社にお勤めのご主人は、土地を購入して家を建てるローンを組むには今しかない、と決断されたそうです。
「はじめてなので、よろしくお願いします」と奥様。ほとんどの人が初めてですから、と打ち合せが始まった。まずは土地を探す相談です。まだ敷地をお持ちでない建て主さんから設計の相談をいただくことはときどきあります。しかしどちらかというと「購入したい土地があるんですが、どう思いますか?」とすでに決めかかっている土地の評価を依頼されることの方が多いですね。その場合はいっしょに土地を見て、建物のおおよその希望をうかがって、計画をシミュレーションして回答します。
今回はそれより前の、まさに家づくりのスタートラインに立っている建て主さんです。これから不動産屋さんを回って土地をみつけ、銀行とローンの相談をして、設計事務所で家の相談をし、予算内で工事してくれる工務店と契約し、現場で大工さんたちの仕事を見まもり、家財をまとめて入居するまでのしんどくて、でも楽しい旅のはじまりです。
数日前にメールでご連絡いただいていたので、サンプルとして希望エリアの物件データをいくつか準備しておきました。いつもの「御成不動産」で、レインズ(*1)に流れている物件のなかからエリアと価格で検索した数件をプリントしてもらいました。堤さんは用意よく、そのエリアの地図を持参されていました。「この町内からこの町内までが子どもたちが通っている小学校の校区なので、できればその中で見つけたい」とのこと。それから「海岸から近すぎると津波がこわいので、1キロ以上離れたい」とも。かなり希望範囲が明確です。肝心の予算については、土地と建物で総額5千万円、とこちらも明確ですが、これは1軒目のマイホームを建てる施主の一番多い予算額です。「トータル5千万として建物を重視するなら半分ずつくらいが理想ですが、そのエリアだと土地のほうにお金がかかるかも」と話し合ってとりあえず3千万までで探すことに。

ではどこにいい土地の情報があるのでしょうか。まずは不動産屋さんですが、レインズは広範囲に情報を検索できるので、エリアにこだわりがなくて好条件ならどこでも、という場合には威力を発揮します。また、周辺の坪単価の相場がよくわかります。一方、この町内で、みたいなピンポイントの物件なら地主と知り合いの地元の老舗不動産屋に相談すると生な情報が見つかったりします。「御成不動産」は今回は「そのエリアは得意じゃない」ということでレインズ担当をお願いし、別に地元の不動産屋で信頼できるところもあたることにします。
もうひとつの方法として、「足で」土地を探す方法もあります。空き地や古家に「売地」という看板が立っているのを見たことがありますよね。物件にはレインズに流さず、自社ルートで買い手を探している場合があります。不動産業者としては売り手と買い手の「両手」を扱えば手数料が2倍入ってくるので、見込のある物件は直接売りたいのでしょう。実は堤さん、以前自宅の近所で「売地」の看板を見て、直接電話してみたことがあるそうで、「どこで知ったんですか?」と逆に聞かれたそうです。
今日の打ち合せは、これからしばらく土地を探しながら、同時に住まい方、暮らし方のイメージをたくさんメモにしていきましょうというお話をして終了です。子どもたちはお行儀よく辛抱して待っていてくれました。つづく。

*1「レインズ」:Real Estate  Information Network Systemの略。不動産業者の会員専用の全国不動産物件情報ネットワーク。一般人は見ることができない。不動産屋に行くとレインズのデータシートの下部にお店の帯を付けてプリントアウトしてくれる。