こどもは今を生きる 橋本志津江
おひさま組は生まれてまだ1年足らずの小さなこども達ですが意欲があり、意志があり、自分のやりたいことに向かっていきます。大人の考えで危ないなどと思い、やる前に止めると大声を張りあげてそっくり返ったり泣いたり、言葉を話さなくてもしっかり拒否し、自分の思いを身体中で表現します。見守っていると手や足で高さを計り、やめたりこけたりしますが、自分の力を計り知っていくのです。
ようやく動き出したこどもでも瞳を輝かせハイハイや歩行で向かっていきます。ハイハイのこどもでも泥だらけになり、幼児棟まで行ったりずりバイでも隣のクラスに行きイスにはい登ったり多少こけても転んでも必死に向かっていく姿に感動します。
保育士はこどもの身体が動きやすくなるようにマッサージや体操をし、汚れたパンツを替え、こどもと一緒に笑顔で歌いリズムをするとこどもは寄って来て一緒に遊びます。よく見ています。模倣が始まると雑巾がけをしたり自分より小さな子をあやしたり“おいで”と両手を差し出します。おもちゃの取り合い、場所の取り合いも始まりますが、こども同士の関わり合いも増えていきます。こどもは身体が元気で安心できれば自分の力を出し、自ら育っていくのです。
おひさま組のこども達だけではありません。少し大きくなると、遊びに夢中になると寡黙になり黙々と遊び込みます。身体は力がついてくると中から力がわき出てくるように全身を使う遊び、追いかけっこ、鬼ごっこ、木登り、棒登りなど高いところが好きになります。どのクラスも水、土、虫、花などの自然が大好きです。
年長になると天の川づくりや雑巾縫い、側転、なわとびなどすぐに出来ないものに挑戦し、むずかしい事、大変な事に自分の力と知恵をそそぎ困難な事をのり越えようとします。すぐに出来ない事、うまくいかない事、失敗する事が必要なのです。“何度もやれば” ”あきらめなければ” ”努力すれば” 出来る事を身体で覚えていくのです。大人は失敗しないように効率よく上手に出来るように教えたりしがちですが、赤ちゃんでも歩き始めは何度も転んでは何度も何度も立ち上がり歩行を完成するのです。こどもには「転ばぬ先の杖」はいりません。こどもにはやりたいという意欲があれば自分のものにする力を発揮するのです。その為には誰かと比べたり大人の価値観を押しつけたりせずこどもの力を信じ見守ること、こども達が心地よく過ごせる環境づくり(物的、人的)が一番必要です。大人は未来のことを考えこどもにこうしてあげたい、また、よい子に育てる為しつけなくてはと思いがちですが、こどもが出来ることはこどもがする、または一緒に行い、伝えたい事は、大人がやって見せる。日常のあいさつや人に優しくする行為でも大人がすれば赤ちゃんでさえよく見ているのです。幼児は今はしなくても大人の姿から学びます。
こどもは遠い未来や過ぎさった日々は考えません。考えられないのです。こどもは「今」、今を生きているのです。こどもは受け入れられ自分の力を認められれば持てる力を発揮し前へ前へと向かっていきます。
0才児の今、1才児の今、2才3才4才5才それぞれの年令の今を大切に保育したいと考えています。
保育園では何かを決める時
1番は こどもにとってどうする事が良いか
2番は 職員にとって力を発揮しほこりを持って保育できるか
3番は 父母にとって家族としての生活がつくりあげられるか
が決めてです。
こどもの世界も大人の世界もスムーズにいく事ばかりではありません。大変な時でも困難な時でもあきらめず力を合わせれば乗り越えていかれます。
ピヨピヨ保育園は創立以来「一歩前進、二歩後退」「1人の百歩より百人の一歩」の精神でゆっくりじっくりすすんできました。こども達にもゆっくりじっくりすすむ事、一人ではなく仲間と共にすすむ事、生きる事を伝えたい思っています。
2014.9.3
(ピヨピヨ保育園の毎月のおしらせ9月号より転載)