家づくり日記その8「柱状改良で地盤沈下対策」

大型連休のこの時期、鎌倉はとても過ごしやすい気候になります。山の緑や花も美しく、観光客もたくさんやってきます。そんな中、堤さんの敷地ではいよいよ工事が始まりました。工事と言ってもまだ建築工事ではなく地盤改良工事です。地盤改良とは建物が地盤沈下によって傾いてしまわないように基礎の下の軟弱な地盤を固くする工事です。堤さんの敷地の地盤はスウェーデン・サウンディング法で調査していますが、その結果、敷地の一部に宅地造成の際の埋め戻し土が入っていることがわかりました。そこに基礎をのせるためには埋め戻し土を固く改良する必要があるのです。
地盤改良にはいろいろな方法があります。表層改良といってベタ基礎全体の下の土を表層だけ固くする方法や鋼管杭という鉄パイプを地面に何本も打ち込む方法などありますが、今回は柱状改良を採用しました。これは地面の下の土を円柱の形に固める方法です。写真に写っている巨大なコルク栓抜きのような機械で直径60センチの穴を掘り、掘りながらスクリューの先端からセメントミルクを注ぎ込んで土と混ぜ合わせます。何日か経つと土が円柱の形に固まるわけです。これを必要な本数だけ行います。今回は約3mの深さまで掘り下げました。そこから下は地山、つまり昔からの固い土であることが地盤調査データで判明しています。実際3mあたりでスクリューに急に負荷がかかってそれ以上すんなり入っていかなくなったことでもわかります。
地盤沈下する可能性がある土地とは、水際など自然の地層が軟弱地盤である場合と、埋め立て地や斜面の造成など盛り土で人工的に造った土地の場合があります。堤さんの敷地の一部も一度掘った部分に人工的に土を盛っているわけです。
柱状改良や杭を固い支持層まで入れることは地盤沈下対策として信頼性の高い方法だと思います。しかし、鎌倉でこれをやろうとすると大きな問題にぶつかることがあります。それは埋蔵文化財、つまり遺跡の問題です。遺跡が埋まっている可能性のある地域を埋蔵文化財包蔵地と呼び、工事で地面を掘る場合は事前に発掘調査をして記録を残さなければなりません。たとえば深さ3mの改良をする場合はその前に調査員が少しずつ掘っていって、工事で破壊されてしまう地下3mまでの地層に埋まっている文化財を保存したり、住居跡を図面にしたりするのです。
堤さんの敷地では、宅地造成で地面を掘った箇所ではその工事の前に発掘調査が済んでいて、今回はすぐに地盤改良に取りかかることができました。しかしそれは建設予定範囲の端の限定的な部分で、その他の大部分は未調査のままです。そこに基礎をつくるためにはやはり発掘調査をする必要があります。次回はその発掘調査の様子をお知らせしたいと思います。