鎌倉らしさコンペ

「鎌倉をよく知る建築家による鎌倉らしさコンペ」(http://www.nengo-renovation.jp/kamakura/)という指名コンペがありました。敷地は実在しますが、プログラムは住宅であることだけが決められて他の条件は自由なアイデアコンペです。そこに「堂楽の家」という案を出しました。鎌倉らしさとはなにか。いつも考えていることですが、あらためて問い直してみました。

『古都のおもかげは寺社に残っている。この敷地も宝戒寺の境内であったという。そこに受け継がれてきたお堂のような、おおらかな住まいで楽しむ自然と一体となった暮らし。
ここに鎌倉らしさがある。』

上は応募案の設計説明文からの引用です。古都鎌倉というイメージはみんなが共有するものです。もう少し詳しく考えると、鎌倉らしさは、ふたつの要素から成り立っていると思います。ひとつはコンテクスト、これはまち並みから抽出されるスタイルのようなものです。もうひとつはパブリックイメージ、これは人それぞれが鎌倉に対して持っているイメージの平均値です。そこに実際にあるまち並みと、みんなの頭の中にあるイメージが組み合わさって、その町らしさが定義されているのだと思います。下の写真が敷地周囲のまちなみです。

『まち並みの鎌倉らしさ
地盤の高低差を石積みの擁壁で保全した上にサンゴジュかマサキの生垣で道からの視線を遮る。その後ろに季節を彩る大小の立木を配し、建物は軒のあたりが垣間見えているのが鎌倉の屋敷のたたずまいである。玄関ポーチまで長めのスロープで引きを取ることで門扉をなくし、来客を和やかに迎え入れる。自動車は半地下のガレージに入れて道から隠す。風の通るガレージは薪置き場や工作室としても重宝する。』

『暮らしの鎌倉らしさ
涼風が通り抜け、鳥のさえずりやひなたぼっこを楽しめる回廊が建物の四方に巡らされる。深い庇にまもられたこの中間領域は内外を結びつけ、生活の楽しみの幅を広げる。
内部は吹き抜けのリビングとその周囲の個室からなる。天井近くの高窓は冬は陽光を導き、夏は暖気を排出し、いわば自然の空調設備となる。』

まち並みの鎌倉らしさはコンテクストから考え、暮らしの鎌倉らしさはパブリックイメージから考えて設計案をつくりました。残念ながら1位は逃しましたが、鎌倉らしさを考え直すいい機会だったと思います。