シニア向けのコミュニティハウジングを計画しています。コミュニティハウジングとは、分譲マンションにコモンスペースが付属している形式で、普通の住戸以外に住民みんなで使う大きなキッチンやダイニングルーム、リビングルームなどが用意されています。最近我が国でも見られるようになってきたコレクティブハウジングというものがありますが、それは賃貸のマンションにコモンスペースがついているもの。一方、住民が組合を作って設計委託するコーポラティブハウスがあり、こちらは所有権方式ですが、いっしょに食事などをすることは前提になっていないのでコモンスペースは限定的です。
コミュニティハウジングはコレクティブとコーポラティブのいいところを組み合わせたシステムで、所有権方式ながら住民同士がコミュニケーションをとりながら暮らしていく新しいタイプのコーポラティブハウスです。特に今回計画しているのはシニア女性向けのもので、年配の女性があつまって楽しく安心して暮らせるようにバリアフリー仕様で設計中です。
この建物が面する道はかつての商店街で、2階建ての木造店舗がだんだんと3階建てに建て変わっていっています。この建物は4階建てなのですが、その将来のまち並みに合わせて、道に面した正面は3階建てにします。同じ高さの壁面が並ぶまち並みにするためです。しかもその外壁を木板張りにすることで、鎌倉らしい印象をまち並みに与えたいと思っています。
山門のような構えを見せる木板張りの壁をくぐると広々としたポーチがあり、来訪者を迎えています。このポーチは地域に開放されたポケットパークとしても使ってもらいたいと思います。ポーチからドアを入ると玄関ホールに続いてコモンスペースが広がっています。住民同士が食事したりおしゃべりしたりする集いの場です。近所の人たちが訪ねてきて一緒に過ごすこともできます。2階から4階のそれぞれの住戸に上がるためのエレベーターはコモンスペースの奥に位置しています。ですから、住民は帰ってくると必ずコモンスペースを通るので、そこにいる同居者とあいさつを交わすことになります。隣人の顔も知らないという都会のマンションとはちがう、暖かな人間関係がコミュニティハウジングにはあります。