稲村ヶ崎の家

海しか見えない敷地
何度か海の見える敷地で設計する機会がありましたが、この稲村ヶ崎の高台の土地ほど海がよく見える敷地はありませんでした。よく見えるというより、海しか見えない。ただし、道路から階段を170段も上らなければならないのですが。

んなの家
クライアントからの要望のひとつが、みんなの家にしてほしい、というものでした。いつもだれかが訪ねてきてくつろいでいるような開放的な家。そこで一階をカフェのようにあけっぴろげなリビングにしました。170段の階段を上りきるとそこは屋根に覆われたテラスがあり、テラスは直接リビングにつながっています。床も同じコンクリートにして内と外の境をあいまいにしています。キッチンもダイニングもリビングも間仕切りのないオープンなプランで、隣家側だけ壁になっていて、全面壁面収納にしています。
2階は反対にプライバシーをまもり、海から吹く風にも負けないしっかりした箱にしました。ただ、露天風呂が好きなご主人のために、浴室だけはテラスに出っ張っていて、サッシがフルオープンになる半露天風呂になっています。

そこはかとなくエキゾチック
また、以前ご夫婦で旅行された南の島のエキゾチックな雰囲気を感じられるようにしてほしいとの要望がありました。そこで景観的にも周囲に調和させつつエキゾチックな薫りをかもすにはどうしたらよいのか考えました。まず、外壁を無塗装の杉板張りにして南の島の漁師小屋風な素材感を持たせました。杉板は最初はベージュの木の色ですが、風雨にさらされると2,3年でしぶいシルバーグレーに変色するので、それを見越してあえて無塗装としたのです。

 

バッテンでリゾート風に
さらに、普通は壁の中に隠れている筋交いをデザインの要素としてところどころに露出して配しました。もちろん筋交いは構造的に有効なのですが、この筋交いのバッテンが、ビーチハウスのバルコニーを彷彿とさせる南国的な雰囲気を醸しているのです。