松原の家

えない屋根
写真でみるかぎり、四角い箱型の家です。それは実際この家を訪れた人が道から見ても同じです。しかし実はふつうの家と同じように三角の屋根が載っています。屋根の角度を計算して、道路からは見えないように工夫しているのです。もちろん見かけ通りの平らな陸屋根にすることもできたのですが、収納をたくさん取りたいというクライアントのご要望から、屋根裏のロフトを最大限活用したいと思ったのです。クライアントはグラフィックデザイナーで、この四角いシャープなデザインを気に入ってくれました。外壁はグレーのガルバリウム鋼板の平葺きです。鋼板の平葺きは一般的には屋根の工法ですが、耐候性が高いことと、職人の手仕事の風情が感じられるため、私はよく外壁に使っています。一枚ずつ手で折って張ることで出るよれっとした感じが麻のジャケットみたいなリラックスした素材感を醸してくれます。サイディングのような工業製品にはない魅力です。
内部は木質
家の中に入るとインテリアはすべて木質系でまとまっています。居間は2階にありますが、天井裏まで吹きぬけていて、傾斜屋根の形がそのまま現れています。高い位置にハイサイドライトがあって居間に光がふりそそぎます。居間の南面に連続してバルコニーがあり、深い庇がついています。バルコニーを囲む壁は外壁ですが、材料は杉材にしており、玄関を入ったらガルバリウム鋼板はいっさい目にすることがないようにしています。
見えない収納

居間の天井近くの壁にはロフトに入る扉があります。移動はしごで出入りします。居間の左右に2カ所あり、かなりの収納量を確保しています。さらに寝室には内壁と外壁のすきまの壁厚を利用して、文庫本の収まる奥行きの戸棚がぐるりと部屋を囲んでいます。収納はたくさん欲しいけど見えないようにしたい、という要望に答えました。