ひとそれぞれが持っている建築やまちなみなどデザインに対する価値観はどうやって形成されていくのでしょうか。文学や音楽やスポーツなどと同じように、子どもの頃からデザインの良い例にたくさん触れているほうが、そうでない場合よりもホンモノがわかるひとになるのでしょうか。もしそうなら、鎌倉の子どもたちに鎌倉のいい建築、いいまちなみをたくさん見せてあげたい。そういう思いから、小学生との「まちあるき」に参加するようになりました。毎年、鎌倉市立第二小学校の児童たちの「まち探検」でファシリテーターをさせてもらっています。
また、川をまちにとりもどそう、という気運が全国の自治体で盛り上がっています。コンクリート護岸によって風景としても遊び場としても残念なことになってしまったまちなかの川を、もっと自然に近く、そして人にも近くなるように改修する例が増えています。鎌倉の川も景観と遊び場をとりもどしたい。みんながそう思えば、少しずつ良くなるはずです。そのためには将来を担う子どもたちに、まずはもっと川を身近に感じてほしいと思います。そこで活動を休止していた「鎌倉の川びらきの会」の運営を数年前に引き受けて、夏に小学生と「川探検」のイベントを始めました。滑川で魚を捕ったり、川の源流を探しに行ったりしています。
ところで、川に入ると足もとの流れや生き物を見下ろすものですが、ふと顔を上げると、いつも見慣れているまちなみが裏側から見えます。川に向かって垣根をつくる家はないので、とてもフレンドリーなまちなみなのです。道に向かっても、そういうまちなみにして欲しいですね。